ワインに乳製品や薬品のような香りを感じたことはありますか。
今日もちょっと、深く掘り下げてワインのテイスティングについて学んでいきましょう!
今回は、香りの表現方法の第5回目です。
ワインから香りを見つけるには先ず、その香りを知っていなければなりません。
表現の上手いソムリエが、どのような時に使い、どんなワインから感じ取っているのかについて解説していきます。第一回目はフルーツ、第二回目は花・植物、第三回はスパイス・土・木、第四回目は焦げ・動物臭を学んでいただきました。
今回は、乳製品と発酵臭、薬品です。第4回までを復習しながら今回も深い内容で学んでいきましょう。
第一回目フルーツ編、第二回目花・植物、第三回スパイス・土・木、第四回目焦げ・動物をご覧になっていない方は、先ずはこちらからご覧ください。
目次
テイスティングコメント 復習
ワインのテイスティングコメント 表現 ①フルーツ編
ワインのテイスティングコメント 表現 ②花・植物編
ワインのテイスティングコメント 表現 ③土・木・スパイス編
ワインのテイスティングコメント 表現 ④焦げ臭・動物編
乳製品 ワインの表現 テイスティングコメント
乳製品の香りは、乳酸菌が生み出す香りです。
乳酸菌は醸造技術としてワインに添加する菌の一つです。
これは、マロラクティック発酵によって「ダイアセチル」という物質が生まれることで乳製品の香りがします。
ワインでは乳製品の香りは、調和して良い香りになりますが、日本酒に同じ「ダイアセチル」が含まれると、日本酒の香とはうまく調和せずに、オフフレーバーとしてとられることが多いです。
乳製品 | ブドウ品種 | 表現 |
ミルク | マスカットベリーA | 優しくほんのり甘いミルクの香り |
バター | シャルドネ | ややはっきりとした乳製品の香り。「発酵バター」の香りが近い |
ヨーグルト | マスカットベリーA | 乳製品の香りにやや酸味が加わったようなニュアンス |
マロラクティック発酵とは
マロラクティック発酵とはどんなことなのか、あまり分からないですよね。簡単に解説していきます。
マロラクティック発酵とは、アルコール発酵に続いて起こる反応で、ワイン中のリンゴ酸が乳酸に変化することを言います。
ワインに含まれる有機酸は、主に酒石酸、リンゴ酸、クエン酸の3つです。
それぞれブドウ、リンゴ、レモンのような酸味を感じると思えばわかりやすいです。リンゴ酸の尖った酸味をまろやかにすることが目的です。
この中のリンゴ酸を乳酸に変化させるのですが、昔はアルコール発酵が終わった後に、ワイナリー内の木樽や醸造設備の中から乳酸菌が混入するからだと考えられていました。
しかし、現在はワイナリー内に住み着いた乳酸菌の発酵を待っていては、昔の生産量をはるかに超えた生産量ですので不安定な製造になります。そのため、スターターとして「乳酸菌」をワインに加えることが多いと言います。
チーズ製造でも、同じく乳酸発酵するためスターターとして乳酸菌を添加しています。
シャルドネ マロラクティック発酵
マロラクティック発酵をしているワインの代表と言えば「シャルドネ」です。マロラクティック発酵後、木樽で熟成しバランスを取ります。
マロラクティック発酵と木樽の香りは相性がとても良いです。
マロラクティック発酵&樽のシャルドネは、ブルゴーニュの高級産地とカリフォルニアのシャルドネです。
シャルドネのテイスティングは、分かりやすいと言われていますが、実はマロラクティック発酵&樽のシャルドネだからです。マロラクティック発酵も樽熟成もしていないシャルドネは、なかなか品種として当てることが難しい、品種の一つです。
プロのソムリエだって、ソーヴィニヨンブランやリースリングと間違えてしまうほどです。
実は、シャルドネはマロラクティック発酵&樽、というお化粧をして個性を発揮する品種と言えます。
発酵臭 ワインの表現 テイスティングコメント
ワインにおける発酵の香りは、主に微生物によって生まれる香りです。強すぎると不快に感じてしまう香りです。アルコール発酵が由来したものや、発酵食品の香りを指します。
発酵 | ブドウ品種、分類 | 表現 |
酢 | 劣化したワイン全般 | 酸化したワインに発生するツンとした匂い |
イースト | シャンパーニュ、甲州 | 香ばしいパンのような香り。澱と接して熟成したスパークリングワインや、白ワインに感じられる。パンが焼きあがったような香り |
たくあん | 劣化したワイン全般 | 酸化したワインに発生するツンとした苦い匂い |
醤油 | 劣化したワイン全般 | 赤ワインが劣化するとたまり醤油のような鈍い香りが発生する。高温で保存した場合に起こりやすい |
薬品臭 ワインの表現 テイスティングコメント
酸化臭や還元したワインなどから香る臭いです。一部のブドウ品種の品種特徴香でもあります。
薬品 | ブドウ品種、ワインの分類 | 表現 |
接着剤 | 劣化がはじまったワイン全般 | 酸化したワインに発生する薬品のツンとした匂い |
薬箱 | 劣化がはじまったワイン全般 | 薬箱は、正露丸や絆創膏、ビタミン剤、消毒液などが混ざったようなニュアンス |
正露丸(ピート香) | 劣化がはじまったワイン全般 | 上記の薬箱のような香りに、正露丸のようなスモーキーさが加わったようなニュアンス。ピート香はスコッチウイスキーにも含まれる香りで、この香りはウイスキーの特徴でもあり好まれる香りになる |
アルコール | ワイン全般 | エタノールの香り。アルコールが高い果実味豊かなワインには感じやすいが、アルコールとワインが馴染んでいない時に特に感じやすいツンとしたような匂い |
インク | 還元したワイン | ワインが還元しているものに現れやすい。万年筆のインクの甘くツンとした香り。 |
灯油(ぺトロール) | リースリング | リースリングの品種特徴香り。好き嫌いがあるがそのワインによって、ぺトロールが多いもの、少ないものがある。最近の生産者は、あまりぺトロール香がでないように造っているワイナリーも多い。 |
鉛筆の芯 | ソーヴィニヨンブラン | ボルドー地方のソーヴィニヨンブランに感じられる香り。やや鉱物的でスモーキーなニュアンス |
油、酒類、その他 ワインの表現 テイスティングコメント
その他 | ブドウ品種・分類 | 表現 |
油・ワックス | 劣化がはじまったワイン全般 | 蜜蝋のワックスのような鈍い臭い |
酒(吟醸香) | 醸造による香り | バナナのような匂い。低温で発酵した白ワイン。主に添加した酵母による香り。「酢酸イソアミル」という物質による。 |
日本酒 | 白ワイン | 香りが穏やかなものに感じやすい香り。重たい甘さがある白ワイン |
シェリー酒 | 酸化したワイン | シェリーは酸化のニュアンスが強く、酸化したワインのコメントに用いる事が多い。ネガティブな表現よりポジティブに表現する場合に用いると良い |
紹興酒 | 劣化がはじまったワイン全般 | カラメルのような重たく酸化したワイン。マディラなどに近い香りで、テイスティングで当てることも難しい場合もある |
チョーク・石灰 | さわやかな白ワイン | 鉱山的、ミネラルの香りの表現の一つ。雨上がりのグランドや湿った石灰のような香り。 |
鉄・金属 | 赤ワイン | オレンジワインやグリ系ブドウのワインに感じやすい。鉄棒のような匂い |
石鹸 | 醸造による香り | 亜硫酸が少ないワインに感じやすい。重たくフローラルな香り |
海藻 | 還元したワイン | 還元臭の代表的な香り。世界的には「ヨード」という。牡蠣やハマグリのような香りに似ている |
✔ 還元ワインについてはこちらを参考にしてください
誰にも聞けない コルクのブショネ当てられますか?
まとめ
フルーツからはじまり全5回に分けて、ワインの表現方法についてお伝えしてきました。是非、ワインを飲みながら香りや味わいの表現に参考にしていただけましたら幸いです。著者はワインのテイスティングコメントや様々なワインのイベントを、オンラインのワインスクール「ヴィノテラス」に参加しています。是非、ソムリエによる実践的な勉強をリアルタイムで学んでみるのも、かなり知識の構築に繋がります。是非「ヴィノテラス」に参加してみてください。
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