今日はちょっと、深く掘り下げてワインのテイスティングについて学んでいきましょう!
ワインから香りを見つけるには先ず、その香りを知っていなければなりません。
表現の上手いソムリエが、どのような時に使い、どんなワインから感じ取っているのかについて解説していきます。第一回目はフルーツから学んでいきます。数回に分けてテイスティングコメントを作成していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ワインの表現 テイスティングコメント 果実
果実の香りは、ワインの香りにおいて最も重要で使用される表現方法です。ほとんどのワインは果実の香りを持ち合わせており、次にその果実の状態を表していきます。その違いによってビンテージやテロワールの特性などが特徴として表れていることは言うまでもありません。
✔ 果実の状態からわかること
- フレッシュ → 若い
- コンポート → 甘い果実(暖かい畑のブドウ)
- コンフィチュール → 熟成感がある
ワインのテイスティングコメント 柑橘
では、柑橘系から始めてみましょう。柑橘といえば、多くは白ワインの用語として使われます。
白ブドウは柑橘系のにおい物質を多く持っているからです。ステンレスタンクで熟成させているものは、フレッシュで軽やかな柑橘系で、樽で熟成したものは重い果実の香りになってあらわれてきます。
果実 | ブドウ品種 | 表現 |
レモン | 甲州、ソーヴィニョンブラン、シャルドネ | 熟成期間の若いワインに使用される。フレッシュで酸味が際立っているタイプ。 |
スダチ、ライム | 甲州、ソーヴィニョンブラン | 主に、ハーブの香りがするものに感じる。レモンより頻度は少ないが、青みがかったフレッシュなワインに使用する |
柚子、カボス | 甲州、ソーヴィニョンブラン、リースリング | フレッシュなワイン。レモンほど強くはないが、華やかな時に表現する。 |
グレープフルーツ | ソーヴィニョンブラン、リースリング | フレッシュと華やかどちらも感じるときに使用する。少し甘い酸味の時にも使用する |
オレンジ、みかん | 甲州、デラウエア、マスカットベーリーA | 白ブドウが熟したときに表現する。オレンジワインにも使われる。マスカットベーリーAには多く感じる香り |
柑橘の皮 | シュナンブラン、シャルドネ(シャブリ系) | フレッシュなライトタイプのワインに感じられる香り |
ワインの表現 テイスティングコメント 甘い果実
果実 | ブドウ品種 | 表現 |
赤いリンゴ | ソーヴィニョンブラン、リースリング | 熟成したシャンパーニュや、やや酸化的な白ワインにみられる |
カリン | シャルドネ、シュナンブラン、ピノグリ | 軽やかな果実の甘さを連想させる香り。そのワインの熟成度が上がることで、コンポートやジャムとして表現される |
洋ナシ | 樽がかかったシャルドネ | カリンの香りが進むと洋ナシになるイメージ。成熟度の高い白ワインに使用される。樽シャルドネに多く見られる |
アンズ | シャルドネ | フレッシュなアンズは熟度の高いシャルドネの表現に。アンズのコンポートやジャムは貴腐ワインの表現になる |
桃 | 甲州、シャルドネ、リースリング、ソーヴィニョンブラン | 白ワインに多く感じられる。成熟度の高いブドウから感じられて、柑橘に加えて感じることが多い |
メロン | シャルドネ | 日本酒にもよく感じられる香で、ワインなら低温で発酵した白ワインで表現される |
マスカット | デラウエア、ミュラートゥルガウ | 酸味は少なく、味わいは軽やかなワインで表現される |
樽を使用したシャルドネなど、技術的な製造を加えたワインに使用されることが多い。さらに熟成すると、ジャムやコンポートなどを加えて表現します。
私たち日本人は果実を多く食べて経験していますよね。だから果実を見ただけで「甘そうだ」「酸っぱそうだ」ということを連想させます。そのため、ワインから感じられる香りが、すぐに記憶から引き出されて、果実の香りを表現できるのです。
✔ 本格テイスティングの方法はこちらで詳しく解説しています。
ワインの官能評価 専門家の本格テイスティング解説
ワインの表現 テイスティングコメント トロピカルフルーツ
トロピカルフルーツは温暖で温かい国や土地のワインに感じられる香りです。
果実 | ブドウ品種 | 表現 |
パイナップル | デラウエア、シャルドネ | 暑い地域やしっかりと熟した年の白ワインで使用される表現 |
ライチ | ゲヴュルツトラミネール | ゲヴュルツトラミネールの品種特徴香。 驚くほど、ライチの香りがします。 |
バナナ | ガメイ(ボジョレーヌーヴォー) | 日本酒にもよく見られる香り。マセラシオンカルボニックで造られたワインに感じられる香り。 |
マンゴー | 樽シャルドネ | トロピカルフルーツの中で一番濃厚な香りで表現される。ニューワールドの熟した白ワインに多く見られる |
パッションフルーツ | ソーヴィニョンブラン | ニュージーランドのソーヴィニョンブランに感じられる品種特徴香。パッションフルーツの香りがしたらニュージーランドのソーヴィニョンだと100%正解して欲しい。 |
ワインの表現 テイスティングコメント ベリー
果実 | ブドウ品種 | 表現 |
ラズベリー | ピノノワール、マスカットベーリーA、ガメイ | 酸味があるベリー系に使用される。冷涼な地域のピノノワールに多く感じられる。 |
サクランボ | デラウエア | みずみずしく、やや酸味が穏やかな印象 |
イチゴ(イチゴキャンディ) | マスカットベーリーA、ガメイ | マセラシオンカルボニックで造られたワインで造られたワインの品種特徴香。イチゴキャンディの香りがしたら、マスカットベーリーA、ガメイだと分かるように訓練をしたい |
ブルーベリー | メルロー、シラー、カベルネソーヴィニヨン、サンジョベーゼ、ネッビオーロ | 凝縮感があり、濃い目の赤ワインで多く感じられる香り。やや暖かい地域や年代で感じられることも多い。 |
カシス | メルロー、カベルネソーヴィニヨン | カベルネソーヴィニヨンの典型的な香り。凝縮感がありタンニンが豊かな赤ワインに多く感じる香り。 |
ブラックベリー | ツヴァイゲルトレーベ、メルロー、シラー、カベルネソーヴィニヨン | ブルーバリーやカシスより凝縮感があり、濃い目の赤ワインに感じられる。果実の甘い風味も一緒に感じられる。 |
ベリー系の香りは赤ワインで感じる香りです。赤ワインであれば、ほとんどのワインに何かしらのベリーのニュアンスがあります。
ブルーベリーやカシス、ブラックベリーは凝縮感があり、濃い目の赤ワインに多く見られる香です。濃淡も濃く渋みも多いワインです。
ワインの表現 テイスティングコメント ドライフルーツ
熟成を感じさせる赤ワインに使用する表現です。サンジョベーゼ、ネッビオーロの品種特徴としても使われます。
果実 | ブドウ品種 | 表現 |
ドライプルーン | サンジョベーゼ、ネッビオーロ、熟成したボルドー系、ジンファンデル | ワインの濃淡が濃く、凝縮感が豊かなワイン。タンニンも多く含まれている。熟成が感じられた時にも使用する表現 |
ドライイチジク | サンジョベーゼ、ネッビオーロ、熟成したボルドー系 | 赤ワインが酸化的な熟成を感じるときに使用する表現。凝縮感があり余韻が長いワインの特徴。 |
まとめ
柑橘系の表現コメントはいかがでしたでしょうか。簡単に覚えられそうですよね。果実を食べるチャンスがあれば、必ず果皮から香りをかいで経験に結び付けることで、ワインの官能評価はどんどん上達します。テイスティングは、持って生まれた才能ではなく、繰り返し行うことで香りと記憶を結びつけることができます。
日常でできることは、様々な物質の匂いを経験して記憶していくことが一番です。記憶しておくことで、ワインの表現方法が豊かになります。
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ワインのテイスティングコメント 表現 ②花・植物編
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