近年、ヨーロッパの古典的なワイン産地(フランス、イタリア、スペイン、ドイツなど)以外にも、世界各国のユニークなワインが国際的な評価を高めています。
特に注目されているのが、いわゆる“新興産地”と呼ばれる地域です。
イメージとしてはワイン後進国のように思われがちですが、
実は歴史や伝統を持ちながらも、
これまで市場に十分な情報が届いていなかった地域が多数存在します。
本記事では、その中でも特にワイン専門家の間で話題になっている
「ジョージア(グルジア)」「モルドバ」の二つの国を中心に、
新興産地ならではの魅力や具体的なワインの特徴、
トレンド背景などを深堀りして解説していきます。
目次
1. ジョージア(グルジア):ワイン発祥の地とも言われる国
ジョージアは、コーカサス山脈の麓に位置する国です。
一説では約8,000年以上前からワインづくりが行われていたと言われるほど、
ワイン醸造における世界最古の歴史を持つ国のひとつです。
そのため、「新興産地」という呼び方はやや誤解を招くかもしれませんが、
国際市場への流通量が比較的少なかったため、
まだまだ日本では「新しい」存在として捉えられています。
1-1. ジョージアワインの醸造法と特徴
ジョージアのワインといえば、**クヴェヴリ(Qvevri)**と呼ばれる
素焼きの壺で発酵・熟成させる伝統的手法が有名です。
クヴェヴリは地中に埋められることが多く、
土に近い環境の中でワインが自然発酵を進めることで、
複雑な香りや独特のタンニン感が育まれるといわれています。
- アンバーワイン(オレンジワイン)
白ブドウを果皮ごと発酵させるため、深い琥珀色やオレンジ色の外観を持ち、
紅茶やドライフルーツを想起させる味わいが特徴的です。
渋みやタンニンがしっかり感じられるため、
赤ワインのようなコクと白ワインの爽やかさを兼ね備えています。 - サペラヴィ(Saperavi)
ジョージアを代表する黒ブドウ品種で、濃厚な色合いと凝縮感ある味わいが魅力。
酸味がしっかりとしているため、肉料理はもちろん、
旨味の強いスパイス料理などとも相性が良いとされています。
1-2. 国際的評価と市場への進出
近年、ジョージアの小規模ワイナリーがヨーロッパやアメリカの品評会で注目を集め、
続々と受賞を重ねています。
自然派ワインブームとも相まって、
伝統的なクヴェヴリ醸造への関心が高まり、
欧米のワインショップやレストランのワインリストにもジョージアの
銘柄が見られるようになりました。
日本でも専門店や百貨店の催事で取り扱いが増えつつあり、
今後さらなる認知度アップが期待されます。
2. モルドバ:ヨーロッパの小国から世界へ羽ばたくワイン
モルドバは、東ヨーロッパのルーマニアとウクライナに挟まれた小さな国です。
国全体が比較的温暖な大陸性気候であり、
肥沃な土壌にも恵まれていることから、
ワイン醸造が非常に盛んな国として知られています。
実はモルドバは人口当たりのブドウ畑面積が世界有数で、
伝統的にワインづくりが盛んな風土があります。
こちらは著者おすすめの美味しいモルドバワイン
2-1. モルドバワインの品種とスタイル
モルドバでは、国際的に有名なブドウ品種
(カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルローなど)と、
土着の品種(フェテアスカ・アルバ、フェテアスカ・レガーラ、ララ・ネアグラなど)が
並行して栽培されています。
こうした多様な品種構成があることも、
モルドバワインの魅力を広げるポイントのひとつと言えます。
- フェテアスカ・レガーラ(Feteasca Regală)
「王女のブドウ」という意味を持つ白ブドウ品種。柑橘系や白い花を思わせる繊細な香りと、ほどよい酸味が特徴で、魚介類やあっさりした鶏肉料理との相性が良いとされています。 - ララ・ネアグラ(Rara Neagră)
モルドバを代表する赤ブドウ品種のひとつで、軽やかでフルーティな味わいが魅力。タンニンは比較的ソフトなので、赤ワイン初心者でも楽しみやすいスタイルが多いです。
2-2. モルドバワインと輸出の拡大
旧ソ連圏への輸出依存度が高かったモルドバですが、
近年はEUやアジア市場への進出を積極的に展開しており、
品質向上にも力を入れています。
国際的なワインコンクールで受賞するモルドバワインも増えつつあり、
日本国内でも輸入商社がセレクトして販売を始めるケースが増加。
まだ流通量は多くありませんが、
レストランやバーで「モルドバワイン」を見かける機会が徐々に増えているのも確かなトレンドです。
3. 新興産地を取り巻く最新トレンド・ニュース
ジョージアやモルドバのように、
世界的に知名度が爆発的に上がっているわけではないものの、
ワインの専門家や愛好家の間で徐々に話題になっている産地は他にも存在します。
例えば、旧ユーゴスラビア地域(クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナなど)や、
南米大陸のウルグアイなど、今後さらなる飛躍が期待される地域が多数あります。
3-1. 自然派・オーガニックへのシフト
近年のワイントレンドとして、「自然派(ナチュラルワイン)」「オーガニック」「ビオディナミ」などの製法が世界的に注目されています。
新興産地の中には、資金力では大手産地に劣るものの、
広大で汚染の少ない大地が残されていたり、
昔ながらの農法を続けてきた地域も多いため、
結果として自然派ワインが多く生まれやすい環境にあるのです。
ジョージアのクヴェヴリやモルドバの家族経営ワイナリーなどは、
こうした流れと親和性が高いといえるでしょう。
4. 新興産地ワインを楽しむポイント
これらの国々のワインは、日本ではまだ流通量が限られており、
目にする機会が少ないかもしれません。
しかし、少しアンテナを高くしてみると
、特設コーナーを設ける百貨店やセレクトショップ、
ワインバーなどで出合えるチャンスが増えています。
いざ試飲する場合、以下のポイントを押さえるとより楽しめるでしょう。
- 先入観を捨てる
「ジョージアの白は酸味が強い」「モルドバの赤は軽い」など
、一概に決めつけないこと。地域やワイナリー、
品種によって味わいは大きく異なります。 - ペアリングを工夫する
ジョージアやモルドバの伝統料理
(例:ジョージアのヒンカリやハチャプリ、モルドバのプラチンタなど)
とのマリアージュはもちろん、
日本食との相性を試してみるのも面白いアプローチです。
酸味や渋みのバランス次第では、意外と和食に合うボトルもあります。 - 作り手のストーリーを知る
小規模ワイナリーや家族経営の生産者には、
独特のストーリーがあることが多いです。
インターネットやSNSを通じて情報を集めると、
そのワインの背景をより深く理解でき、味わいが一層印象的になります。
モルドバワインとぴったりの料理はチーズ料理がおすすめ。
こちらのチーズスライサーでチーズをふりかけても美味しい
5. まとめ
ジョージアやモルドバは、古くからワイン生産の歴史を持ちながらも、
近年まで国際市場においては比較的“控えめ”な存在でした。
しかし、ヨーロッパやアメリカのワイン専門家たちがその品質と独自性に注目し、
数々の品評会で賞が与えられるようになると、
一気に脚光を浴びるようになっています。
伝統的な醸造法や土着品種が生む複雑味、
さらには自然派ワインへの強みと相まって、
新興産地という括りでは語り切れない魅力を放っています。
今後、日本でもジョージアやモルドバをはじめとする多様な産地の
ワインを手に入れる機会が増えていくでしょう。
ワイン愛好家だけでなく、「まだ知らない味わいを探してみたい」
という好奇心旺盛な方には、
ぜひ一度これらの国のワインを試してみていただきたいと思います。
ブドウ畑やワイナリーの風景、
そこに暮らす人々の情熱と伝統が詰まった一杯が、
きっと新たな感動をもたらしてくれるはずです。
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